旧村田薬局
増田地区最古の薬舗
重伝建地区の中央に店舗を構える「旧村田薬局」は、江戸時代から十一代続く増田地区最古の薬屋として営業しておりました。平成十五年に廃業したものの、平成二十六年には店主の尽力にて店舗が修繕され、観光のために一般公開される事になりました。
村田薬局の前身は、江戸時代中期に伊勢の国(現在の三重県)相川郡より伊勢商人と一緒に秋田に入り、中町に店舗を構えた薬種屋だと伝えられております。
初代善兵ェ薬種屋から時代が下り明治三十年の頃。沓沢惣三郎家より養子としてきた岩五郎氏が売り上げを大幅に伸ばし、現在の村田薬局の元となる蔵の店を建てました。一時は県内一の売り上げを誇る薬舗だったそうです。
今でも残るモダンな調剤室や重厚な調度類。さらに残されている資料や商品の数々から、かつての村田薬局の栄華が伺えます。店蔵は増田に二軒存在する切妻造り平入の一つとなっております。
地下室は天然の貯蔵庫
「旧村田薬局」の見所の一つが、天然の貯蔵庫とも言える地下室です。夏でも涼しい石造りの地下室は、秋田県特産の院内石で美しく組まれ、一面を玉石状にする事で湿気取りの役目もあったらしいです。
アーチ状の梁と竿縁天井
「旧村田薬局」のもう一つの見どころが二階の薬品保管庫の竿縁天井です。竿縁天井とは天井板を廻り縁と竿で支えている天井で、通気性に優れた建築様式。
中間で天井を支える梁はアーチ状になっており、さらに廻り縁には洋風の繰り方が彫られた凝った作りです。こちらの保管庫で展示されている薬品や調度品も年代を感じさせる貴重なものばかりで驚かされます。
アメリカ軍で実際に支給されていた包帯の数々や、顕微鏡をしまっておいたと言われる、巨大なガラス瓶は圧巻です。
敷地内を通る分水嶺
建物の裏手には「旧村田薬局」と「佐藤又六家」の間を通る水路が、敷地内で二手に分かれる分水嶺があります。
この水路は戦国時代から続くと言われ、かつては生活用水や火消のために使われておりました。今でも趣のある佇まいで、街の景観に涼を添えています。
増田最古の薬舗「旧村田薬局」の正面玄関から裏玄関までのトオリを歩くと、様々な時代の片鱗を感じることができ、しばしの間タイムスリップした気分を味わえるでしょう。